子供の頃。
年の瀬も迫っていた時に祖父に倣いお正月飾りのしめ縄作りをやらせてもらったことがある。
祖父と同じように両手を使って稲藁を縁ろうとしてもなかなか上手くいかず最後は見かねた祖父が代わりに作ってくれたのだった。
丁寧に作り上げていく様を見ていた私は
『格好いい!』
と心の中で叫んでいた。
その瞳を輝かせて祖父の手仕事を見ていたに違いない。
しめ縄飾りや新しい年神様を迎える準備や支度、祖母や母はおせち料理の準備など親戚も加わって大人たちは忙しく動き回っていた。
その後、しめ縄飾りを作る機会には恵まれなかったけれど祖父と過ごしたひと時の時間は昭和時代だけではなく大正、明治、さらに遥か昔から引き継いできた自然を敬う気持ちと感謝の念。
不思議なことに、しめ縄飾りを作っている祖父に神々が語りかけているかのようで清らかな空気に満ちていて時間の流れもいつもと違うと感じたことを覚えている。
私もいつの日かこの習慣を引き継ぐことができたら良いなと漠然とした思いを抱いたけれど私の人生は何故かそれとは逆の方へと進んでいく。
まるで引き離されるように。
かの日から数十年経ち既に祖父母はこの世に居ない。
あの不思議な空間で見えないけれどそこに居た神々と過ごしたであろう時間を私は忘れたことはない。