今週のお題「大移動」
我が家で飼っていた小鳥は大の車好きだった。
私が出かける準備をしているとわかるや否やソワソワし出して落ち着かなくなり、小鳥用のキャリー(弁箱)を支度するとその度合いは更に増すほどだった。
当時住んでいた地域から実家までの約200㎞に及ぶ移動は小鳥にとって楽しかったに違いない。
いつものように移動用に使っていた弁箱を用意して小鳥は助手席に乗せてシートベルトを締める。
これが出発の合図になるらしく
『今日はどこに行くのー?』
と言わんばかりの表情で私を見つめ次に外を見つめ車がゆっくりと滑り出すとキャリーの中に用意した餌を食べる。
小腹満たすと再び止まり木に乗り外を眺める。
車窓から外の移り行く景色は殆ど青空だけだったろうが途中の山間部や高速道路になると囀るのをやめて静かに外を見つめ餌を食べ満腹になり眠り時々寝言を言う。
それの繰り返しだった。
飼育本を読むと車での移動は小鳥に外の景色は見せないようにして行くと良いでしょう、とあるのだけど我が家の小鳥は外を見せないと怒ったことから車窓から見える景色がマンネリ化した室内での日常とは違い楽しかったようである。
そのため、時にはレジャーと称して往復で300㎞ほど日帰りの移動をしたこともある。
勿論だが人間の食事は必然的に車内となる。
我が家の小鳥は生涯の間に移動した距離は千㎞は超えていただろう。
日常生活の中で車で出掛けたくない時には必ず行きたくないと拒否する。
そんな時は家で留守番をしていた。
私たち人間も一日中家を空けることはせず長くても半日で用事を済ますようにしていた。それ以上は私が心配で置いていけないと思っていたからだ。
不思議だが、日帰りの旅行や実家への帰省時には必ず、
行く!!
早く支度して!!
まだなの?
そう催促しているのではないかと思うほどの喜びようだった。
話は戻るけど小鳥の生涯で移動した距離はかなりのものだったと思う。
叶うなら聞いてみたい。
車での移動や旅行は大移動に匹敵するか否かだったのかを。