春。
桜の咲く頃。
桜の枝の蕾が膨らむ。それらを眺めると優しく穏やかな気持ちになる。
美しく咲き誇る桜たち。
特にソメイヨシノの花盛りになると巷では花見だと何やかんやと騒がしい。
むかし上野へ出かけた折に桜の老木を見かけた。
幹の太さは見たところ樹齢は100年はあるだろうか。
不思議なことだけど
『おいで、こっちへおいで』
そう語りかけてきたような気がして誘われるようにその桜の下に行き幹を背に立つと穏やかな空気に包み込まれているようで私は幸せな気持ちになった。
この桜の木は人が好きなんだと思った。
そんな桜の木に声をかけられるなんて私は幸せ者だ。
きっと私が生まれるずっと昔から多くの人に愛されて大切にされてきた桜なのだろう。
そんな樹木との出会いも人と同じく一期一会。
ひと時の静寂な時間。
桜を見上げて耳を澄ますと枝いっぱいの花々が囁くように歌をうたっているように思えてならない。
また別の年。
桜が咲き誇る河岸を歩いて、その美しさと儚さと自然の草花などのいのちの息吹と声として聴こえるわけではないが彼らは歌をうたっているようだ。
私の心に伝わってくる温かく安らぐもの。
その尊さに手を合わせて見つめる先には雄大な山々の碧。
悠久の時を生きて繋げてきた彼等の命の営み。
私はその時の流れの一端をこうして見つめている。
なんと幸せなことだろう。
どうかこの先もこの美しく雄大な自然が変わらずそこにありますように。
美しい姿を見せてくれてありがとう。
舞い散るはなびら。
また来年も会いましょう。
新緑が眩しい木々よ、桜の花よ、草花たちよ。